反論ホーム・ページ(5)
双方向の議論は起こらない
(15)
さてここから私の考えを中心にして述べるので、これまで紹介したことなどを
整理しておく。
まず、反論ホーム・ページに関して「週刊現代側がインターネット上で再反論
すれば双方向性が確保され、重層的なやりとりになる。」と言うコメントがあっ
た。
しかし私はここで期待されているような「双方向性の議論」というのは必ずし
も起こらないと考えている。単に起こらないという予測を述べているのではなく、
ホーム・ページでの反論にそういう「双方向性の議論」を求めることが必ずしも
正しくないと考えている。
これが第一の論点である。
次ぎに、同じくニフテイとフォーラムのSYSOPが訴えられたパソコン通信
による名誉棄損に基づく損害賠償請求事件に関する東京地裁判決(以下「ニフテ
イ判決」という。)に関し、パソコン通信やインターネットをこれと似たもの
(平等の立場から「対抗言論」を行い得るものとする。)と捕らえ、所謂公人理
論で名誉棄損の成立を考えるべきだとする考えがあった。
しかし、私はパソコン通信やインターネットにおいては(特にホーム・ページ
においては)公人理論で名誉棄損の成立を考えるべきでなく、特に、平等の立場
から「対抗言論」を行い得るという考えは「双方向の議論」が可能という考えと
同様であるからこの考えは取りえないと考える。
以上が私の問題とするところであり、これまでは前2点の論者の主張が存在す
ることを明らかにするために紹介してきた。
以下から私の考えを述べる。
(16)
私は、既に触れたところであるが、パソコン通信やインターネットにおいては
多くの議論したがらないネットワーカー(これを、まだ少し「サイレント・ネッ
トワーカー」と呼ぶことにする。)が存在する現実を無視できないと思う。こう
いう現実を電子メデイア社会の未成熟と言って片づけてしまうことは、今後電子
メデイア社会においてこれから生じてくるであろう問題を解決不能にするのでは
ないかと危惧する。
私の理解では、その例としてニフテイ判決に関して示された論評がある。
しかし一方ではパソコン通信やインターネットでは、新聞やテレビの様に一方
から他への片面的情報発信ということに留まらないで、読み手や視聴者からの即
時の反応が可能なものとなっている。ここに、世間の大多数が「双方向の議論」
が可能と考える理由がある。したがってサイレント・ネットワーカーとは、それ
が仮に大多数であっても、単に機会利用の意思のないものであるから、それは電
子メデイア社会の特徴を考えるときに考慮に値しないと言うことになるのかもし
れない。
けれども、サイレント・ネットワーカーとは誰を言うのか、或いはどういう状
態のネットワーカーを言うのかと考えると、それは決して単純ではないことが分
かる。
例えば上述の討論(#01194参照)で発言している一人も、ある議論で起こった
悪口に嫌気をさして「逃げだした」と発言しているが、こういう場合も一種のサ
イレント・ネットワーカー状態と言えよう。
或いは、パソコン通信の掲示板やフォーラムの内容は聞きたいが発言はしたく
ないという場合は無数にあると思われる。パソコン通信やインターネットのニュ
ーズグループやホーム・ページのコミュニケーションを研究しようとする学者は
特にそうであろう。また、テーマに応じた発言を行うことにより自分の社会的地
位なり立場が顕在化することを恐れる場合もある。純粋に議論の水準に追いつか
ないと恐れる場合もあろう。取材目的の記者は勿論議論はしたがらない。一度、
フォーラムか掲示板で議論をして苦い経験を味わった人もこれに含まれる。
実は、私の場合も一部はこれに近いものがあって場合によってはサイレント・
ネットワーカーである。何故なら7番会議室、8番会議室、11番会議室は、私
が随分と関心を持っている会議室であり毎日アクセスしているが、残念ながら多
忙のため殆どアクセスできない。つまり関心があっても議論には加われないから
ここでの双方向性は私にはない。
ホーム・ページにおいても、自己紹介または自己の見解を主張するだけの目的
のネットワーカーの中には、自分に敵意ないし反対の意見を持つものには対応し
ないという場合もある。
今のところ講談社は早稲田大学のホーム・ページに自社の主張をもって対応す
ることをしていないが、これは、その主張をすることによって、将来の法的対応
が不利になることを慮っているのではないかと推測する。
私は、これだけ多様性をもって議論したがらないネットワーカーがいるという
ことは、サイレント・ネットワーカーの存在というのがパソコン通信やイ
ンターネットの持つ宿命だからであり、決して未成熟でも病理現象でもないと考
える。
この理由については次回に触れることにする。
なお、蛇足ながら早稲田大学の反論ホーム・ページに関する情報を付言してお
こう。
早稲田大学ホーム・ページの相手方に立つ講談社のホーム・ページをみると、
現在のところ何の反応もない。しかし、週刊現代11月1日号の48ページ欄外
をみると、同号同ページの記事がそのまま講談社ホーム・ページに転載されるこ
とになっているようである。同号同ページには、早稲田大学出身のジャーナリス
トその他多数の著名なOBが、講談社への反論を掲げた母校を批判するコメント
をしている。講談社のホーム・ページが、仮にこれに加えて講談社自身のコメン
トをしたとしても、これは自社のホーム・ページだから私はそこに双方向性の議
論があるとは思えない。また、それぞれのホーム・ページでの一方的発信という
状態が双方向性の議論が行われていると言えないことは間違いないことであろう。
[1997.10.22]