反論ホーム・ページ(1)


ホーム・ページと公開論争
(1)
  「週刊現代」9月13日号が「早稲田大学はついに三流大学に成り下がった!
?」という見出しを付けた記事を掲載したことに対し、早稲田大学はそのホーム
・ページに抗議と反論を掲載した。
  このことは早稲田大学の発表記事なので14日の各紙に掲載されている様だが
、朝日新聞はその効果について二人の識者の意見を載せているのでこの点につい
て考えてみたい。

 なお、この項では早稲田大学と週刊現代の間で争いになっている事柄には殆ど触
れない。その理由は・既に週刊現代は早稲田大学との話し合いにおいてかなりの部
分について誤りを認めており、問題はそれらの誤りを認めた上で、それでも記事は
全体として早稲田大学を誹謗したものではないと主張しており、これは事実評価の
問題となっているからである。
  勿論、その事実評価については私でさえも批評めいたことは言えるが、残念なが
ら早稲田大学の出身でもない私には興味がないのでこれは他の方に譲りたい。

  おってこのテーマを「インターネットにおけるホーム・ページの効用について
考えるもの」ととられるとこの発言もFメロウでは20番会議室に掲載すべきも
のとなる。しかし、私は次の理由で9番会議室が適当であると考えているので、
ここにアップさせて戴く。
 理由は
1  この「旧聞批評」シリーズはもともと9番会議室の「考察・研究」に相応しい
ものとして発言しようとしていること
2  一番で書いたことの裏返しであるが、インターネットに関する気軽な話題や
技術的な話題を中心とする20番会議室にはそぐわない内容であると考えている
こと
3  そして最後にこれが一番大きい理由だが、、私はこの取り上げようとするテ
ーマはインターネットとパソコン通信に共通する問題点を含んでいるニ考えてい
ること
 以上による。

(2)
 朝日新聞に識者として登場し、一定のスペースにこの早稲田大学のホーム・ペ
ージ(以下この項に限り「反論ホーム・ページ」という。)の効用について談話
を寄せたのはインターネット弁護士協議会代表の牧野二郎弁護士と一橋大学大学
院社会学研究科助教授の安川 一氏である。
 まず牧野弁護士は社会的に責任ある団体がメデイアに対して反論する方法とし
てホーム・ページを利用したことについて「即時性があり、有力な方法である。」
と肯定する。
 これに対し安川助教授は「インターネットによる反論の機会が確保されること
は好ましい。」としつつも「現状でこの方法に効果があるかといえば疑問だ。」
とする。

 もう少し両者の言い分を述べると、牧野弁護士は「週刊現代側がインターネッ
ト上で再反論すれば双方向性が確保され、重層的なやりとりになる。」として、
大学が市民に開かれていくためにも面白い試みだとする。
 他方、安川助教授は「インターネットに接続出来る人は多くないし、たとえ接続
しても、問題となっている事柄や早稲田大学に関心が無い人の目に入ることは少な
いはずだ。」とする。

(3)
  お二人ともインターネットを利用することによって反論することについては積極
的な意義を認めておられ、私もこの点は同感である。ただ、安川助教授は反論の効
果について消極であり、この点において私の考えは牧野弁護士の考えに近い。しか
しながら、牧野弁護士が期待しているような双方向性の議論というのは必ずしも起
こらないと考えている。否、単に起こらないという予測を述べているのではなく、
ホーム・ページでの反論にそういう双方向性の議論を求めることが必ずしも正しく
ないと考えている。
 これらの点で私はこのお二人の考えに全面的に同感であるとは言わない。
 そこで私はここでは「ホーム・ページでの反論にそういう双方向性の議論を求め
ることは必ずしも正しくない。」ということを述べることにしたい。

  以前から考えていることであるが、私はパソコン通信もホーム・ページも必ずし
も論争を行う場と考えていない。ところが、世の中にはパソコン通信もインターネ
ットのホーム・ページも論争を行う場であるかの様な受け止め方が実に多いと思っ
ている。

 今回の牧野弁護士の見解でも、ホーム・ページは公開で論争を行う場であるかの
ように考えている様である。
  これは感覚的にそういう印象を持つというものではない。牧野弁護士がリーダー
となっているインターネット弁護士協議会(ILC)編著の、インターネット法律
叢書1「ホーム・ページにおける著作権問題−現役弁護士が答えるQ&A−」(毎
日コミュニケーションズ刊)巻末リレ−討論「ホーム・ページを作るということ」
(同書212ペ−ジ以下)を読むとそのことは明確に述べられている。
 このほか、所謂ニフテイとフォーラムのSYSOPが訴えられたパソコン通信に
よる名誉棄損に基づく損害賠償請求事件に関する東京地裁判決(平成9年5月26
日)について、この判決を批評した高橋和之東京大学教授も、これと似た立場から
インターネットやパソコン通信を捕らえている(ジュリスト1120号80ページ)

 私は次回に、パソコン通信やホーム・ページに関するこういう考えが妥当なもの
かどうか検討したいと思っている。[1997.10.15]