世界戦略の基礎
毎日の新聞・TVニュースを良くみていれば世の中のことは大抵分かると
思っているが、いつも大きな事件が起こるとそうでもないことを痛感する。
北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)では金正日が総書記に就任したが、私はこれは世界秩序が安定に向かう兆しと思っていた。
新聞の社説も多くはそういう見方の様に見える。
私は更に長引いていた北朝鮮の食糧危機がようやく落ち着きをみせたため、権力の正常な承継が行われたと考えていた。
そしてそれであれば今後は更に世界政治の場でも対話・協調が進むのではないかと思いたくなるのだが、所謂専門家というのは将来を冷たく見据えてもっとシビアに考えている様だ。
いつもの様に少し古いが、ニューズウイーク(日本版)5月14日号は南北朝鮮と日本の関係について意外な予測を立てている。
ここではアメリカのシンクタンクや情報機関の専門家に共通するものとして、まず10年後、20年後の北朝鮮の崩壊を共通して掲げている。
これがアメリカの単なる願望ならば、ただの読み物と思っていればいいのだが、重点をその後のことに置いて書いているので、何となく考え込まされてしまうのだから不思議なものだ。
例えば、記事では北朝鮮が崩壊する場合として宮中クーデターを起こした改革派が韓国に助けを求める場合、また北朝鮮がソウルを攻撃する場合、飢えに耐えかねた国民が国境に殺到する場合などを挙げている。
平和的に統一されることは諦めている様だ。
この中で良く分からないのは、宮中クーデターの可能性などあるのかどうかだが、今日のTVニュースが伝えるところによると、金正日総書記は正規の規約によらずに全人民の一致した総意により選出されたのだという。
労働新聞は、規約に因らずに選出されたことは非常に意義深いことだと賞賛し
ているというから、世論や民主主義を気にする我々の国の常識では不可解である。
しかし、こういう規約にない手続きで選出されたということは、歴史的にみれば権力者としては最高の力を発揮できたという意味で、もはや権力の最高水準に行き着いたということではいないか。
するとこれからは対抗勢力も現れるのであり、逆に記事にある宮中クーデターという考えもあるということなのかな、と妙に感心してしまう。
もっともイラクでもそういう試みは成功していないから本当のところは素人には分からない。
ニューズウイークによると、とにもかくにも北朝鮮は崩壊して朝鮮統一が実現するらしいが、ここでアメリカは出現した大国が日本を攻撃することを警戒しているという。
これは1990年代から韓国の軍備は対北朝鮮向けのヘリコプターや砲門などの防衛兵器ではなく、長距離ジェット機を始めとする対外攻撃能力の増強に向けられれているからだという。
従ってアメリカは統一朝鮮が大国化することは望んでいないし、このことは中国も同じだという。
「中国も同じだ」というと、少し記事を間違って紹介することになるからちょっと軌道修正すると、アメリカが警戒しているのは北朝鮮の南進ではなく、中国による統一朝鮮の攻撃であるという。
これはアメリカとしては統一朝鮮の大国化を懸念するのは勿論だが、中国に属国化して大国化するのは最悪のシナリオだからということらしい。
いずれにしても北朝鮮が崩壊して統一朝鮮が生まれるというのは、中国も含めた大国の一致した見方であるという。
その国が日本に攻撃を仕掛けてくるとなると、これは日本に防備を固めさせようという魂胆に基づくPR記事かと思わないでもない。
しかし、それはさておいても、一体統一朝鮮はどういう国になるのか、ちょっと分からなくなる。
結局、この規定の仕方や可能性を幾つ考えるかで武力をもった大国の世界戦略が決まるというとであろうか(?)
もっとも、これらは将来の問題であり、ニューズウイークによると「主体思想」は堅固なものなので容易に統一はできないともいう。この思想は金日成が宣伝した民族主義的な思想だが、一方南北双方の文化に共通する非妥協的な世界観なので、南北が手に手を携えて成長するというのは難しいという。
「難しい」ことなのに、10年、20年のマターで戦略を練り、短期の政治目標に反映させなければならないとはご苦労なことである。
そしてそれを真面目に考える私も、、、、、[1997.10.11]
