老若戦争なんか嫌ですね。
(1)
強烈なまえがきで始まる本に接した。
ちょっと刺激的だが、でも読んでもらわないことには分からないので、最初の5行だけ、少し長いが引用する。
曰く
「このごろの高齢者ほど、平和ボケ・繁栄ボケの典型はいない。老人扱いはイヤだと口では言いながら、国の老人過保護政策にどっぷり浸りすぎ、わがままで、自分勝手で、頑固で分からずやで、要求過剰で、傍若無人で、無反省・無自覚で、謙虚さが不足で、どうにも扱いにくい存在だ。彼ら高齢者が国家財政を圧迫している不愉快な現実に、なぜ誰も怒らないのだろうか。」
と、ま、こんな調子である。
どこかの高齢パソコン通信フォーラムのスタッフがこんな書き込みをフォーラムの会議室に見つけたら、すぐに有無を言わさず「削除」と言いたいところだろう(あ、実は私のことかも知れない(ポリポリ))。
この本の著者はご当人も65歳を過ぎたとおっしゃる野末陳平氏である。
書名は「老人栄えて国滅ぶ」(講談社刊)というもので内容も読み様によっては凄まじい。
特に、まえがきのところは読んでいてハラハラした。
しかし、本文に入ったら、本の意図は要するに社会保障関係の諸負担が団塊の世代を始めとする働き盛りの層に偏っていること、これに比較し、現在の社会保障制度の恩恵(?)を享受している層は相対的に負担が少なくて、これに、より若い層から不満が起こりつつあることなどを述べた、極めて真面目な本であった。
その内容も、一時期参議院議員として政界に身を置き、財政面の勉強をしたこともある人だけに一応筋の通ったものであると思った。
ただその解決策については、現在の日本が財政再建を求められているときなのに「親バカ老人が日本を救う」と題して逆説的な楽観論を述べているので、俄かには同調できないところがある。
(2)
と、ここまでは本の紹介のようなものだが、この本を読んだ後、今度は産経新聞の「正論」で医事評論家の水野肇氏が「老若戦争を防ごう」と題して長文の意見を書いているのに接した。
何と、ここでも、若い層に負担が増加することへの懸念が語られている。
そして、水野氏は「今の若い人たちが持っている((能彦注)若者が持つ負担増への)疑問は、そうまちがっていない。端的にいうと、私は、老人が若い人たちに甘えすぎているのではないかと思う。」と述べている。
水野氏はこの後に高齢層に対して負担増になるような様々な提案を行っている。しかし、これ以上の見解の紹介は、また適当な機会にしよう。
(3)
私の言いたいことは、私の知っている限りは野末氏も水野氏も別の分野で活動している高齢世代に属する知識人である。
しかもこれまでの政界やマスコミでの活躍を見ていると、必ずしも政府や財界のお先棒を担いでいる人ではない。
こういう人達が、より若い層の負担増にいわばクレームを言い始めたというのは新しい風潮の先駆けになっているのかな、と思わせるということである。
但し、我が国の高齢者層は必ずしも両氏のスローガンが唱えるほど厚遇されている存在ではないと思う。
特に、経済的に余力のある人とそうでない人とに二極分化していると思う。
野末氏はそのことは書物の中で認めている。水野氏の評論でも、高齢層の25%の人は別に手当てしなければならない、としているので、野末氏の認識に近いと思う。
そして両氏がそのことを認識しているということならば、両氏の説くところが正しいとしても、結局は大きな枠組みの中で、特に年代層と年代層の間のバランスをとることで解決するしかない。したがって、また延々とした高齢社会における社会保障費の負担者は誰かという議論にならざるを得まい。
そうなると、両氏が考えている「若い層」よりももっと若い層の時代に関してようやく解決できる問題かもしれない。
それにしても問題を提起したという意味では評価すべきことだと思う。[1997.9.29]
