幸齢世代のマナーが悪いのか
(1)
数日前、機内で二人の熟年世代に属する人がユナイテッド航空の航空機の中で乗務員に乱暴を働いたため、検察庁に書類送検されたというニュースに接し
た。二人は異なる日、異なる航空機の機内で暴力を振るったというものである。
一つの事件は、埼玉県入間郡内の会社顧問氏(62歳)が、今年7月にロサンゼルス発成田行きの機内でのエコノミークラスに乗っていた際、ビジネスクラスのトイレに行こうとして中国人のスチュワーデス(27歳)に注意されたことに腹を立て、スチュワーデスの背中を1回殴って5日間の怪我を負わせた疑いとい
うものである。
また、もう一つの事件は、都内のアパート賃貸業者氏(71歳)が、、今年6月にサンフランシスコ発成田行きの同機の中で座席の前の乗客の髪を引っ張って乱暴。注意したアメリカ人スチュワーデス(50歳)の腰を殴って1週間の怪我を負わせた疑い、、、、というものである(読売新聞・9月19日夕刊)。
(2)
どうしてこの様な事件が起こったのか、詳しい事情が分からないのでこれについて正確なコメントをすることは無理なのかもしれない。
マスコミの報道する所謂「事件」であれ、我々が友人から見聞する出来事であれ、少なくとも人の話題として取り上げられる事件というものは一つの側面を強調することが多い。
そしてまたその強調された「事実」が「事件」や話題の性格を決定してしまう。
後から複数の当事者や関与者から他の事実を聞き、そうして自分で判断を加えてみると、なんだここには言われるような事件性・話題性がないではないかと思わないではないものもある。
これは「事件」や話題は、対象となった出来事の一つ一つの事実に思惑や解釈を重ねて再構成すれば、人によっては価値のないことでも社会的には価値のあることとして再現されることがあるからである。
特に、警察の発表や企業・官庁等の発表にある事実が簡単であればあるほど、その中の一つ一つの事実が(再構成者が意図するかどうかは別としても)別な事件の事実としてに作り替えられたかのように見られることもある。
(3)
そういう意味でこの二つの事件の主役も暴力行為を行ったものとみられるのは心外であるかもしれない。新聞の見出しは「機内で暴力行為」と大きく掲げ、しかも記事をよく読むと幸齢世代の人が二人も並んで記述されているのだから一般の人は驚くが、真相は違うかもしれない。
例えば会社顧問氏は用を足すのに火急の場合であってエコノミークラスのトイレでは場所的に間に合わなかったかもしれず、咄嗟に言葉が出てこぬまま、規則を楯に注意するスチュワーデスに抗議のために彼女の背を押したのであったかもしれない。
また、賃貸業者氏は、前の座席の乗客が暫く前から奇声を発しているのをたしなめようとして、軽く髪を引いたところ、その乗客が大声を上げたので事情を知らないスチュワーデスが賃貸業者氏に注意したため、同氏は「本来注意を受けるべき者は前の席の乗客だ。」と思う気持ちが高じ、スチュワーデスに抗議の意思表示として腰を押しただけだったかもしれない。
しかしこれ以上は、私も断定的なことは危なくて(「想像が広がり過ぎて怖くて」と言っても良い。)書くことはできない。どうも元から日本の幸齢世代を贔屓目にみたいという気持ちが強い様である。
私も勿論スチュワーデスが怪我したという事実は否定するものではない。
当人が受けたショックは大きかったろうと同情する。
しかし怪我が5日間とか1週間というのは、実はごく軽い程度の症状ではないかと思う、、、主役が反省の意思さえ窺えれば検察庁では起訴猶予として処理される程度の、、、、。
だから私は諸々の報道されない事実は知らないまま、また報道された事実を鵜呑みにしてここに取り上げるという間違いを犯しているかもしれない。
したがって、基本的な事実認識において間違っていたらお詫びするしかない。
(4)
そうした制約を承知の上で敢えて言えば、二つの事件のいずれにも共通するのは4点ある。
一つは、このニュースの主役を努めた二人は62歳と71歳という、いわば幸齢世代、もっと練れた言葉で言えば熟年世代に属するという点である。
更に二つめは相手となったスチュワーデスがいずれも外国人であるという点である。
三つめは二人とも積極的に何かの行為を行って結果として「注意を受けた。」後に「暴力」を振るったという点である。
最後は、二つの事件とも長時間のフライトの中で起こったという点である。
私は最初この報道に接したとき、幸齢世代の人も元気が良いのは結構だが、でも乗客としてのマナーが悪いのも困ったものだと思っていた。
それでこの記事については忘れていたのだが、つい先日、機内の電子機器使用の問題を取り上げたときに、「?」という気が起きてきた。
実は二人の幸齢世代の方は、「機内で暴力」と言う様な大袈裟なことをしたのではなかったのではないかと。。。そこでこの記事の切り抜きをまた引っ張りだしてきたのである。
(5)
そして先に上げた4点の共通点を考えたとき、私はこの記事は幸齢世代の乗客マナーとして陥りやすい失敗から身を守るものとして考えてもらえば良いのではないかと考え、取り上げることにした。
4点の共通点からはどんなことを学べば良いのであろうか?
仮に自分が同様のフライトをするとした場合には直接的なものとしては次の様な点に留意しようと思うのだが。
まず第一に、長時間のフライトでは、ともかく精神にゆとりをもつことにしておこうと思う。
具体的には「このフライトでは気短かを抑え、気長を心がけるぞ。」ということを自分に言い聞かせておこうと思う。
第二に、語学、特に会話に弱い身としては、できるだけスチュワーデスと仲良こうかと思う。
第三は、飲酒は普段の半分程度に抑えておこうと思う。
よく、時差惚け解消のめには多めに飲んで寝てしまった方が得、という話を聞くが、トイレ対策、対人関係、健康を考えると危ない気がする。
第四は、他人の行動には干渉しないことにしようと思う。
一つの自分の座席が自分の城、、そう思うことにしよう、、狭いことこの上もない城であろうが。
***
しかし、これがマナーを守る方法であろうかと考えると、何だか窮屈で海外に出てゆく気はしなくなる。
所詮私は国際人には向かないかもしれない。[1997.9.27]
