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昼の散歩・常盤橋あたり 18
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ガードを抜ける前に、何か急に華やいだ色が有るような感じを持ったので、横
断歩道の信号の前で上を振り仰いだ。
真正面にみえる高速道路の上方は澄み渡った青空がある。ガードの暗いイメー
ジから解放されてホッとする。しかし、そればかりが原因ではなさそうだ。右手
には白に近いグレー(と思ったが)の日本ビルが雄姿をみせているし、左手にも
細く高いビルがある。これらが伸びやかさを感じさせてくれるらしい。
いやもう一つあった。私の真上には上越・東北新幹線が走っているが、これは
在来線のガードとは全く異なり、全て薄緑色か青色かどっちだったか定かではな
いが明るい色彩に守られている。このおかげで華やかな感じをもったらしい。実
際にここから神田方面をみても、東京駅八重洲口方面を見ても新幹線部分に関す
るかぎり在来線と同様の煉瓦色の古色蒼然とした様子は窺うことが出来ない。
それに、なにか大手町側とは違った堅苦しさがない。これはすこし先に見える
高速道路がちょうど大きな弧を描いて方向を変えているところが、都市空間に丸
みを与えているのだと知った。
すこし詳しく言うと、右手にある日本ビルはこれも大きなビルで、「銭瓶橋町
高架橋」からこの「常盤橋架橋」の、ガードからガードの間の高架に対面する形
になって建設されている。昔の銭瓶橋町一帯をこの日本ビルが占めていることに
なるのであろうか。いや、それだけではなかった、今、私が立っている場所の向
かい側の細いビル、日本ビルの北側でイタリア商業銀行の入っている細い、高い
ビル、これもよくみると「日本ビルデイング別館」と表示されている。
こうした大きく角張ったビルの狭間におかれると、何かしら圧迫感がある。現
に私の立っている場所も後ろは高架ガード、前方両側は大きなビルだから同じよ
うな圧迫感があっていいのだが、それがない。
そのわけが、少し前方100メートル位にある高速道路の曲線であった。丁度
北西の神田橋からゆっくりと南西に曲線を描いてきて、今ここから見えるところ
から東進するために方向をかえ、そうして日本橋川の上を進んでいくところであ
った。
そして、もうすこしイタリア商業銀行の前を進んでから気がつくことになった
が、日本ビルの東隣り・首都高速道路の近くに新日鉄ビルがこれも威容を誇って
いる。しかしこのビルも、日本ビルとの間隔は十分に取っていると同時に、新日
鉄ビル自体も広い緑地スペースをとって建築されているようであった。
曲線、あるいは空間は何となしに人に落ち着きをあたえる。山、海など視界を
余り遮らない風物は人の心の故郷のようなものだと思うが、この常盤橋界隈はそ
こまでは行かなくとも少しはゆったりしたものが感じられる。
ガードを抜け出て、横断歩道の前で立ち止まった光景はそんなものであったけ
れども、イタリア商業銀行の前を通ってすこし行くと、実は新日鉄ビルを目にす
る前に、常盤橋公園の大きな石垣も安心感と歩みを留めたい魅力を感じさせてく
れるのである。
平成4年11月30日のこと

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