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昼の散歩・国立東京近代美術館 10
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竹橋を過ぎると北の丸公園というらしい。昔、江戸城の北の丸があったことか
ら名付けられているようだが、私がこの近くに住んでいた頃は代官町といったよ
うに思う。今では代官町という地名が高速道路のインターチェンジに受け継がれ
ているだけのようである。
橋を渡りきるとすぐに警視庁第一機動隊の入口に通ずる細い道がある。もっと
も隊舎は緑の木立に隠れて見えない。この道の前を横切るとこれに続いて国立東
京近代美術館の横長の大きい看板がある。この看板は歩いている者からは美術館
の建物の外観を目隠ししてしまうが、ほんの二三歩行くと全体に白い印象をもつ
横長の瀟洒な建物が目に入ってくる。よくみると4階建ての建物であるが、窓が
4階分あるわけではないのですぐには気づかない。歩道側からみると4階の東側
に10メートルぐらいの長さで窓が配置されているが、3階部分に窓がなく、一
階と二階の間にも横に幅広い白い壁があるので、全体として体育館のような感じ
を与える。構内に入っても建物の外には彫刻も置いていないので、いっそう美術
館らしからぬところがある。この点、広島城近くの広島美術館の構内はゆったり
した落ち着きがあり、いかにも美術館という風情がある。もっとも、こんなこと
を問題にするのは私のようなステレオタイプの人間だけであろうか?
この美術館は「近代日本の美術」を常設展示にしているというが、残念なが
らまだ見たことはない。それどころかこの建物の中にも入ったことがない。この
美術館は、「近代」という名を冠しているだけに主に20世紀の作品を展示して
いるという。そこでいまはどんな展示をしているのかなと考えて看板を仰ぐと、
「アボリジニの美術−−伝統と創造・オーストラリア大地の夢」が、12月20
日まで開催されているようだ。
「アボリジニ」という表現から、そういう名の画家がオーストラリアにいたか
なあと漠然と思ったが、会館の玄関近くに足を踏み入れてみて、郷土美術展のよ
うな感覚の、日本の織物にも似た布地の写真付ポスターがあったので、ようやく
「ああ、アボリジニとはオーストラリアの先住民のことだった」と気がついた。
どうもモデリアニと勘違いしたようだなと思って苦笑した。
こういう散歩をしながら、今までは目につかなかった事物について細かなこと
に着目しようとすると、いかにも自分の知識が狭い分野に限られていることを痛
感する。やはり10年位前に、たまたま新幹線で隣合わせたご婦人が早稲田大学
文学部の出身で、近刊書を話題に楽しそうに話しているのを聞いて、初めてベス
トセラー嫌いの自分や業務関連の書物しか読まない自分に気付き、以後努めて文
学書やノンフィクションなどを読むように心掛けたが、まだまだ諸事にボンヤリ
人生を送っているものだと思う。何かに関心を持とうと心掛けるならば、いま少
し百科事典的教養も必要なのかもしれない。
そういえば来年は国際先住民年であることを忘れていた。
平成4年11月26日( 木) のこと