左回り




======================================
昼の散歩・左回り                                                   8
======================================
      竹橋の信号待ちで、歩道に立っていると、工事中の竹橋という橋(?)の両脇
    に掛けられた仮歩道が見える。その私が歩こうとするのとは反対の、つまり大手
    濠寄りの仮歩道を相変わらず昼休みマラソンの若者達(必ずしも若者ばかりでは
    ないが、相対的に若者が多い。もっともマラソンというかジョギングというかは
    良く分からないが、概して皇居一周マラソンというように思っている。)が後か
    ら後から日比谷方向から竹橋・代官町方面に走り過ぎてゆく。
    
      そういえば逆はほとんど無い。つまり皇居を時計の中心とすれば時計と反対回
    りで走っていくことになる。
      それで思い出したが、8月に富士通の「夢をかたちに」講演会で早稲田大学の
    渡辺仁史助教授の講演を聞いたとき「人間の歩行は本質的に左側通行、左回りら
    しいといえる」と話していた。その理由としては4つほど挙げておられたが、ち
    ゃんと覚えているのは、一つは人間の心臓が左側にあること、もう一つは、右利
    きの人は右足が左より3センチ長いこと、ということである。
    
      人間の心臓が左側にあることがどう関係するかというと、二人がすれ違うとき
    、右側通行だと心臓がぶつかる可能性があり、それを本能的に避けようとしてい
    るから、左回りになるというのである。
      また、右利きの人は右足が左より3センチ長いことが何故関係があるかという
    と、蹴る力が左足を軸にして右に蹴るほうが強いから、自然に左に曲がるという
    のである。
      そういえば、講演会では東京のどこかの商店街の歩行の様子をフィルムで移し
    てみせてくれていたが、一日の歩行の流れは、確かに人の流れが混んでくると、
    どうしても左側歩行になっていたようである。
    この渡辺助教授は建築人間工学が専門であるが、「人にやさしい空間を設計する
    ための基礎研究としてこうしたことを調査しているらしい。
      
      果たしてこの皇居マラソンの若者達はそうしたことで左回りしているのだろう
    か。皇居のお濠端はマラソンをするには十分な広さとはいえない。どちらかとい
    うと道を反対方向、つまり竹橋から和田倉門方向へ歩いていると、すこし道を譲
    ってあげないとマラソンをしている人には気の毒である。
      私がこの近くに住んでいたのは30年も前のことだが、その時は職住近接であ
    ったから「住んでいた」ということは朝も夕方も始終皇居マラソンを見ていたこ
    とになる。最近でこそ昼しか見ていないが、当時を思い起こすと、昼のように沢
    山の人がマラソンをしている場合ではなくとも、つまり早朝でも(夕方はあまり
    記憶がない。)やはり時計と反対回りであったように思う。もしこの記憶が正し
    ければ、お濠端の歩道の狭さと考え合わせると渡辺助教授のいうことは正しいら
    しい。
                                              平成4年11月26日( 木) のこと



案内に戻るときはこちらをどうぞ。