

====================================== 昼の散歩・黄と緑 7 ====================================== パレスサイドビルが一っ橋一丁目一番地であることは、このビルは竹橋という 土地にはないということだ。そこで、その境を確かめようと思って何気なく目を 反対側の皇居に転じようとしたとき、お濠端は銀杏並木と言えるほど銀杏の木が 多く、かつすっかり黄色になって、歩道も落葉で黄色っぽくなっているのに、こ ちら側は落ち葉は一切なく、しかも緑でいっぱいなのに気がついた。 このあまり派手ではないが、カラフルな彩りの元を確かめようとしてよくみる と、こちら側に銀杏の木は1本もない。車道と歩道の間に山茶花らしい木で生け 垣がつくられていて、ずうっと竹橋の信号の近くまで続いているが、その合間合 間に5メートルくらいに伸びた緑の木が生えている。幹はそんなに太くはない。 反対に、お濠端は銀杏以外の木は、今が色づき時と心得ている黄色の木に圧さ れて、殆ど影もみえない。 片や黄色、片や緑と普段は轟々たる車の流れに呑まれて気がつく由もないが、 こちら側にこの緑の木を埴栽した関係者は、ひょっとしたらこうしたコントラス トを描いていたのかもしれない。しかし、そのことに気づくのはこのせわしい地 区にあっていかほどの人々であろうか。ひょっとすると休日にこの道路を開放さ れる余慶にあずかっている、サイクリング愛好者だけかもしれない。 ところで、こちら側の緑の木は何の木か、と小首を傾げて歩いていると、白い 小さな名札を下げている木があった。ひらがなで「えんじゅ」と書いてある。 オフイスに戻ってから電子ブックの広辞苑を覗くと「槐」と書いてある。マメ 科の落葉高木と書いてあるが、この「槐」という字に覚えがあったので、念のた め「さいかち」という引き方をしてみた。全く同じものだった。勿論、オフイス で考えたことだが、秋田の田舎道でも随分見かけた木だった。「槐」(さいかち )という地名も生まれ故郷の中にあるくらいだ。これが青々と繁っている。 この道路を利用するサイクリングのことだが、私が日曜日にわざわざ家族を連 れて和田倉門まで来、ここから代官町の乾門までの休日サイクリングに参加した のは、娘たちが小学校の高学年のころだから、ほぼ10年も前だろうか。人に聞 くと、まだやっているのだという。現在の片側4車線、あわせて8車線の道を、 子供が中心になって走り行き、帰り来る様はこれが都心かと思わせるような伸び やかな景色だった。概して平坦な道ではあるが、ちょうどこの竹橋の橋口から乾 門までゆるやかな登りとなって、子どもと言わずとも汗ばんだものだが、この今 の自動車の量と轟音はどうしたものだろう。それこそ後から後から途切れること がない。そして明らかな排気ガスの臭い。 本来、こういうところはいわゆる「散歩」には馴染まないものに違いない。 そんなことをふと思っていると、長いパレスサイドビルの終わりに近づき、毎 日新聞社へ見学に行くらしい子供たちの列が、特徴のある円筒形の建物の下に見 えた。 平成4年11月26日( 木) の![]()
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