
*****教会の花壇の花に魅せられて*****
勤め先から神田寄りに歩くと、すぐに天理教のある教会の建物があります。
この建物の入口に向かって右側には、幅1m、長さ3mほどの花壇が二つ並ん
でいますが、この花壇には一種類の草木が植えられているだけです。夏の間は特
にこの高さ20センチほどの草木に関心を持ったことはありませんでした。ただ
何気なく「緑の草木があるなあ」という気持ちがあったでした。
ところが、、、といっても今では何日のことだったのか定かではないのですが、
少なくとも9月以降、この草木の花が咲き始め、またいつの日か分からないので
すが、あるときに花壇全部がこの花で埋まりました。
どうしてそんなに咲いた時期についての記憶が曖昧なのかと言いますと、この
神田地区寄りにはあんまり出向くことがなく、時々、職場の仲間と昼食の趣向を
変えるために行く程度だからです。
この花というのは、いや、葉のほうから説明をしなければいけませんが、この
葉は少し厚手で濃い緑に覆われており、ちょうど椿の葉を小振りにしたようなと
ころがあります。特に特徴的なのは葉に艶があるのか、光によく映えて、ちょう
ど水撒きの水を受けた直後の緑のような新鮮な感じを受けます。
そして花の形は吉野桜の花を少し大きくした様な可憐な形で、花弁は5枚あり
ます。色は全体に桜というよりもピンク色ですが、その外縁は真っ白といっても
いいようです。これが中程になると淡いピンク色になり、やがて花芯に向かうに
したがって色濃いピンク色に変わっていきます。
この葉と花が織りなす模様は見事です。おそらくこの花壇に100本はあると
思うのですが、緑を背景にピンク色の花が浮き上がるように目に迫ってきます。
私は、この教会の前を歩くたびにこの花に見とれていました。何といってもこ
の花の醸しだす気品の高さというか、上品さがそうさせるのです。しかし名前を
知らないことには鑑賞のし甲斐もありません。とうとうこの花の名を知りたくな
りました。そこである日、この教会のドアを開けて右脇にある事務所の方に声を
掛けました。
「すみませんが、あの玄関前に植えてある花は何というんですか?」
事務所には男性事務員が二人話をしていましたが、突然の私の質問に戸惑った
様でした。やや暫く二人で顔を見合わせていましたが、年長の一人が
「さあて、、、なんだっけなア?、、、すみません、今度調べておきます。」
私はちょっとがっかりしましたが、反面安心もしました。それは、(あ、知ら
ないのは自分だけでないのだ。。。。)という安心感だと思います。(^_^)
それから暫くして、またこの教会の前を通りすぎました。そうですね、2週間
前でしょうか。今度は女性が一人に、来客とその応対者らしい方合計3人がいま
した。でも前回会った方はいないようでした。そこで勇を奮ってまた同じ質問を
しました。しかし結局答えは、、、お互い顔を見合わせているだけでした。
私はまたがっかりしたのですが、でも前回と同じように(結構、難しい名前の
花なんだなあ。)と感心し、この花の名前を知らない自分が(Fメロウの人達に
対してはともかく)、一般の人には別に恥ずかしく思うこともないのだあなと、
変に自信が湧いてきました。
そして、今日。
またまた私はこの教会の前を通ることになりました。名の知らぬ花は依然とし
て綺麗に咲き誇っています。ピンク色は緑に会うと一層光を強くするのでしょう
か、目を射るような艶やかさです。
また花の名前を聞きに入って変に思われないかと思う反面、花が最盛期を過ぎ
てからでも困ると思うところもあり、今日も思い切って教会のドアを開けて玄関
内に入り、事務室の窓ガラスを開けて見ました。中には4人の男性が何やら用談
中でしたが、一人は私の顔を覚えていたようで、私がまた「あのー、、玄関前の
花は、、、」と言いかけると、私をみてニヤリと笑い、
「今日は分かりますよ。でも少し待って下さい。」と言い残して事務所を出、
玄関フロアから2階に上がっ行きました。
(あ、ようやく今日は分かるんだ。)と、用談に途中で割り込んだという気ま
ずさも一瞬に感じただけで、その後は、私は期待を持ってそこに立っていました
。ところが今度はその人が中々2階から降りてきません。
事務室に残った3人の内、私に背を向けた恰好で応接セットに座っていた人が
何やら話していましたが、これを聞いた人が私の方に向いて、「ニチニチソウっ
て言ってますよ。」と声を掛けました。
私は意外に単純な答えを聞いて驚きました。でも何となく本当にそうだという
感じがしませんでしたので、つい、
「本当ですか?」と言ってしまいました。
しかし、その人は格別不快そうな様子でもなく、
「まあ、よく分かりませんがそう聞いた気がすると言ってます。宜しかったらお
花を一つ持って行って花屋さんででも聞いてみたらどうですか?」
と親切に言ってくれました。
私は喜んでしまい、
「エッ?いいんですか、、、、では。」とペコリと頭を下げ、喜び勇んで玄関
を出、手近なところに生えていた花の下の茎を手折りました。
そうして花を何に包もうかとポケットを探っているときに、突然玄関の戸が開
き、先程2階に上がって言った人と、私に声をかけくれた人が出てきました。そ
して2階に行った人が
「ニチニチソウですって、これは。」と教えてくれました。
また、声を掛けてくれた人はこれとほぼ同時に
「ああ、もう少し長いところを取っても良かったのに。。」と残念そうに言っ
てくれました。
(そうか、ニチニチソウか? )
私は心から礼を述べ、この花をテイッシュペーパーに包み職場に持ちかえり、
水を入れたコップに移して保ち、夕方、また家に持ちかえりました。
いまこうやって眺めていると、、、あれ?花が少し紫がかったピンク色に変わ
った様な気がします。そして相変わらず上品な感じのする花ですが、、、この上
品さがどこから来るのかとしげしげと探ってみますと、やはり緑の背景と花の色
がバランスを保っているからのようですね。
(95/10/13・記)
次は「居酒屋」をどうぞ。
前ページ